エンジニアリングとパフォーマンス
エンジン

Valkyrie LMは、当社のValkyrieハイパーカーと同様に、コスワース製6.5リットルV12エンジンのリーンバーンバージョンが搭載されており、同一の規制上限である520kW(697bhp)に合わせてチューニングされています。すべてのパラメータは集中的な動力開発プログラムによるリチューニングおよびリマッピングを経ており、ハイパーカーに対する規制を遵守しつつ過酷な耐久レースに対応できる設計となっており、最適化された燃費と操作性を実現しました。

 

Valkyrie LMでは、最高の操作性を実現するために、クローズドではなくオープンループのトルクコントロールを採用して走行体験を向上すると共に、公認レースカーに搭載されていたパワーデリバリー管理用のドライブシャフトと入力トルクセンサーが取り除かれています。V12エンジンは入手しやすい燃料に対応するように再調整され、プロのドライバーやエンジニアからなるアストンマーティンのエリートチームがドライバーに優しいハンドリング設定を策定することで、サーキットで究極のパフォーマンスを発揮できるよう仕上げています。

シャシー

Valkyrie LMの新しいシャシーは、その躍動を支える心臓部です。耐久レースに不可欠な大型燃料タンクを収めるために、精緻な再設計が施されています。バルクヘッドの構造を精緻に調整することで、シャシーのねじり剛性や荷重配分を犠牲にせずに、より大型の燃料タンクとシームレスに統合することが可能になっています。このため、Aston Martin Valkyrie AMR PROの基礎に基づいて開発されたValkyrie LMのシャシーは、耐久レース独自の要件に合わせて最大限大型化されています。

 

さらにドアの構造にまで手が加えられ、ボディワークのトップデッキとドアの接触部分はドライバーの安全性と効率性の面から最適化されています。レースの勝敗を左右するピットでの貴重な数秒を削るべく、車両の乗降がよりスムーズに行えるよう改良されています。

サスペンションとトランスミッション

レース向けのサスペンション構成は、フロントとリアの両方にプッシュロッド作動型のトーションバースプリングおよび調整可能なサイドダンパーとセンターバンパーを搭載したダブルウィッシュボーン方式を採用しています。ウィッシュボーン式サスペンションのジオメトリーは、さらに優れたレースカーのダイナミクスを実現するためにValkyrie AMR Proのものを改良しました。

 

またフロントのウィッシュボーン式サスペンションには、安全性向上のためのアンチペネトレーション部品が追加されています。スプリングおよびダンパーは、レースカーに求められるエアロダイナミクスのプラットフォームにおける究極のコントロールを実現するために、完全に再最適化され、精緻にチューニングされています。後輪駆動のValkyrie LMはXtrac製7速シーケンシャルトランスミッションを搭載しており、セミオートマチックのパドルシフトによる瞬時のギアチェンジが可能です。

ホイール、タイヤ、ブレーキ

F1®の技術がふんだんに採り入れられたAston Martin Valkyrie LMには、F1®のタイヤパートナーであるピレリ製のビスポーク・パフォーマンスタイヤが装備されています。ホイールは新たに設計されており、リムのプロフィールはアウトボードのメカニカルコンポーネントに合わせて細部が見直されています。当社エンジニアはホイールカバーマウントを取り除くことで、最後の1グラムまで軽量化を徹底しました。

 

この軽量化ホイールの内部にはレースカー向けに開発されたレース用カーボンブレーキが採用されており、サーキットのレースで要求される過酷な条件下でも妥協のないブレーキ性能と耐久性を発揮します。一から開発し直されたフロントブレーキダクトにより、レース中の発熱時でもブレーキディスクには冷却エアフローが流れます。まさに、ラップタイムを1ミリセカンドでも短縮する妥協のないブレーキ性能を提供します。